2020年8月から始まったRally第2部。
メインテーマについての講話もさることながら、参加者からの質問やトレンドに合わせたそのとき限りのトピックスも好評です。
9月15日に開催された第2回では、「採用戦略が組織の質を決める」というテーマに沿って、リアルな事例をいくつか紹介しました。
今回はその中から、特定の中小零細企業などで行われる差別化のひとつ、「野球部採用」についての議論をふり返ります。
政府も新陳代謝を促進。今後ますます増える「人手不足倒産」

人口減少にともなって労働人口が減り、中小零細企業は採用市場において、より厳しい戦いを強いられていると考えられてきました。
実際に日本の人口は減少し続けており、今後も増える見込みはありません。
一方で、シニア雇用や女性の社会進出が増えたことで働いている人の比率が上がり、労働人口は7年連続増え続けていることが明らかになりました。
データは「人手不足であるかのように感じていただけで、本格的な人手不足ではなかった」ことを示しています。
企業は人手不足のために採用できないのではなく、単純に採用に失敗しているのです。
最近の例をあげれば、新型コロナウイルス感染症による影響で、解雇者は全国に5万人いると言われています。
それにも関わらず採用に成功した企業が増えたように感じられないことも、「採用の失敗」を裏づけていると言えるでしょう。
人手不足にあえぐ企業に対し、政府は2014年以降、低く抑えられた開業率と廃業率を引き上げ、今後も新陳代謝を促進していくと公言しています。
人手不足による倒産は増える傾向にある一方で、公的な手が差し伸べられることは期待できない状況です。
中小企業が取り組むべきランチェスター戦略

厳しい状況にさらされているにも関わらず、多くの中小零細企業はいまだに大手企業と同じ手法で採用を実施しています。
給与面や労働条件において、大企業に勝る魅力を持たないのであれば負けは確実。今後も人手不足に悩まされ続ける道は避けられません。
そこでRallyのような中小企業の経営者を対象とした講義では、戦略を変え、中小零細企業だからこそできる方法で勝負をかけていくことをおすすめしています。
ランチェスター戦略は、いくつかある戦略のなかでもよく紹介しているもの。別名”弱者の戦略”とも呼ばれます。
広く応募者を募り、辞めずに残った人材を育成する大企業とは真逆の戦略。
一騎討×集中戦略×定性採用の3本柱で、自社にマッチする人材のピンポイント採用を狙います。
ターゲット×差別化による採用

採用におけるランチェスター戦略のひとつに、自社が必要とする能力や条件を持つ人材(ターゲット)に対して、他社とは違う待遇を用意(差別化)して獲得を図る戦略があります。
給与や年間休日を増やすことができれば魅力的ですが、大企業に明らかな差をつけるにはコストがかかります。
一方で”元野球部員”や”ゴルフが好きな人”という、特定の経歴や趣味に絞った応募条件で注目を集める企業も。
IT業界大手であるサイバーエージェントが、麻雀採用を行っていることは有名です。
過去、募集条件を「甲子園出場校に類する高校野球経験者」とし、採用に成功した会社がありました。
ただ今回は参加者から、「野球やゴルフ、マージャン、なかには焼き肉好きなどが応募条件として提示されることがあるが、これで本当に優秀な人材は集められるのか?」との疑問が上がりました。
野球部採用を成功させるための条件

建設業を営む弊社クライアントの例をあげると、元野球部員の採用に成功したのは、「厳しい練習に耐えてきた経験を持つので、体力的にきつい仕事でもやめにくい」という相関関係がありました。
サイバーエージェントの麻雀採用でも、「麻雀が得意な人は人の心理を読むことに長けている=自社の仕事に向いている」という根拠が示されています。
一方で甲子園の出場経験から精神力を評価されて入社したものの、事務的な仕事や高い思考力を必要とする仕事が続かず、退社が相次いだ例も。
野球経験を持たない社員から「この会社はいつから野球チームになったのか」との声が上がり、仕事に対する熱意が失われた例もあります。
つまり差別化を図った採用を行う場合でも、会社の価値観や仕事に対するやりがいをおざなりにした場合は、採用には成功しても不幸な結果を招くことがわかっているのです。
一方で業種によっては、「普通のことをしていたのでは全く応募か来ない。どんな人でもいいからまず応募してもらいたい」ケースも。
応募を得る手段、目立つための手段と考えるのであれば、野球やマージャン、焼き肉に特化した差別化は、採用後の結果とはまた別次元で捉える必要があるでしょう。
今回講座でお話しした採用についての総合的な内容は、第一部3回 Rally「大企業に負けない採用戦略」講座レポートで詳しくお伝えしています。
ぜひそちらもご覧ください!
Rallyでは、2020年10月13日(火)に第3回目の講座を予定しています。テーマは「評価制度で組織のルールをつくる」。3回目以降のスケジュールは、下記からご確認ください。
