2025年3月21日(金)、コォ・マネジメント株式会社主催による「採用セミナー in オンライン 2025」が開催されました。
第一部では、著書『離職防止のプロが2000人に訊いてわかった!若手が辞める「まさか」の理由』で注目を集める井上洋市朗氏による講義が行われ、第二部ではコォ・マネジメント代表の窪田司氏との対談が実施されました。
セミナーでは若手社員の離職の実態をデータから読み解くとともに、「ゆるブラック」と呼ばれる職場の新しい課題や、組織に必要な対話の仕組み、リーダーに求められる未来構想力など、多岐にわたるテーマが取り上げられました。
このレポートでは井上氏による実践的な知見と、参加者とのやり取りから浮かび上がったリアルな課題を振り返ります。
「若手は辞める」は本当か? データでひも解く離職の実態

セミナーは「若手社員がなぜ辞めるのか?」という問いかけを皮切りに、冒頭から実際の離職率データに基づく事実が次々と提示され、参加者の注目が集まりました。
井上氏は世間に広がる「若者はすぐ辞める」というイメージに対し、大卒・高卒いずれの新卒入社後3年以内の離職率も20年前と比べて減少傾向にあることを提示。
チャットには、これまでの感覚とは異なるデータに戸惑いながらも受け止めようとする声が寄せられ、参加者の中で静かな気づきが広がっていく様子が印象的でした。
注目を集めたのは、新卒入社後3年以内の離職率の上昇は主に大企業に限定されるという点や、「安定志向が強いと言われる若者が、安定しているはずの大企業を辞めている」という事実。
井上氏は近年の若者が求める「安定」の中身を、企業の存続ではなく、自身が働き続けられる力や機会に重きを置く傾向があると指摘しました。
この視点を踏まえて紹介されたのが、近年注目される“ゆるブラック”という言葉。
仕事は厳しくないが成長機会に乏しく、将来のキャリア形成に不安を感じさせる環境が、離職理由の背景にあるケースも多いと解説しました。
井上氏が示したデータや実例は、若手社員の離職傾向に関する先入観を丁寧に解きほぐしながら、実際の背景にある価値観の変化や就労意識の多様化を浮き彫りに。
具体的なデータが自社の離職傾向を再考する材料となり、参加者には現場での対策を考えるうえでの実用的なヒントとなっていることが伺えました。
離職対策に必要な視点と、組織の「今」を映す鏡

講義の後半では、「辞める理由」についてさらに深く踏み込んだ分析が行われました。
井上氏は離職には単純な原因ではなく、「きっかけ」と「決め手」が分かれて存在すること、そしてそれらの背景にあるのは、若手が感じる“満たされなさ”だと指摘。
満たされなさの根拠として「存在承認」「貢献実感」「成長予感」を早期離職の3大要因として挙げ、これらの心理的な充足感の欠如こそが、離職につながる大きな要因であるという解説に、参加者からは納得と共感の声が集まりました。
さらに井上氏は、企業ごとに異なる課題を可視化する手法として、「ハーズバーグの二要因理論」や「ナインボックス」の活用を紹介。
「同じ職場であっても、立場や視点の違いによって評価は大きく分かれる」という事実と、それを「対話の入口」に変えていくことの重要性を伝えました。
講義冒頭で井上氏から、「講義中であっても自由に発言してほしい」と言われていたチャットでは、参加者の多くが自社での実践を前向きに考えている様子が伺えました。
また職場づくりにおける“アップデートの必要性”として挙げられたのが、関係性・働き方・コミュニケーションの3つの視点。
井上氏は「単なる制度導入ではなく、自社に合った柔軟な運用こそが、今後の組織づくりに不可欠である」と提言しました。
講義を通して印象に残ったのは、誰かのせいにするのではなく、自社の今を知り、そこから何を育てていくかを共に考えることの大切さ。
離職対策という枠を超え、組織の土台を見直す契機として受け止められていたことが、参加者の反応からも感じ取れました。
参加者のリアルな声に応える対話──離職対策への実践的ヒント

セミナー後半では、コォ・マネジメント代表の窪田司氏が登壇し、井上氏との対談形式で内容をさらに深掘り。
窪田からの質問や、チャットに届いた声に応答しながら、離職対策について議論しました。
参加者の関心が高かったのは、若手社員の価値観の変化と、企業ごとに異なる対策について。
井上氏は、自社の状況に応じたアプローチが不可欠であり、その前提として、社員の視点に耳を傾けることが最も重要であると強調しました。
井上氏はまた、ナインボックスやエンプロイージャーニーマップなどの対話ツールを例に挙げながら、現場との意識のギャップを可視化する仕組みづくりの必要性を説明。
参加者からは「他責傾向が強く、成長意欲の低い若手社員にはどう関わるべきか」といった現場ならではの悩みも寄せられました。
これに対し井上氏は、「他責と思える行動もあくまで“見立て”にすぎない」と前置きしたうえで、行動レベルでの対話やルールづくりが効果的であるとコメント。
採用時のスクリーニングや、入社後の関わり方そのものを見直す視点が印象に残るやりとりとなりました。
対談を通じて浮かび上がったのは、「正解のない時代において、離職対策は企業文化そのものの見直しでもある」というテーマ。
参加者からは、「具体的な対策だけでなく、社員の“行動の背景”に目を向ける視点を得られた」といった声が寄せられ、離職という結果だけでなく、その前段階の関係性やコミュニケーションの質にこそ注目する必要性を実感する機会となったようです。
講義と対談を通じて、「若手が辞める理由」を感覚ではなく事実に基づいて見つめ直すことの重要性、そして定着支援において本当に必要な視点は何かを、改めて考えるきっかけとなった今回のセミナー。
ナインボックスやエンプロイージャーニーマップといった具体的な手法も紹介され、組織の現状を“見える化”しながら、社員との対話を深めていくプロセスの有効性が丁寧に語られた点も印象的でした。
ご登壇いただいた井上様、統計と現場感を行き来しながら、経営者や人事担当者が“明日から動ける”実践的なヒントを惜しみなくご共有いただき、誠にありがとうございました!
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