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第5回 Rally「定着率を上げる科学的な設計法」講義レポート

  • 2020.07.23
  • 活動レポート

2020年6月22日(月)、中小企業診断士、窪田 司(くぼた つかさ)コォ・マネジメント株式会社代表取締役による、戦略的人事講座”Rally”、第5回目の講座が開講されました。

第1回で組織づくり第2回で評価制度第3回では採用、そして第4回では育成について学んできた参加者。

最終回となる5回目では、会社にとって必要な人材の定着率を上げるために、どのような社員に対して、どういった手を打っていくべきかについて考えました。

講座のねらいと参加者の課題

今回の講座のねらいは、「中小企業における人材の定着について考え、自社の理想とする人材の入れ替わりを理解する」こと。

目標水準は、「自社の社員のポートフォリオの下書きを、講義終了までに考えられる状態にすること」と定められました。

参加者からは

・定着率を高めるための賃金制度について知りたい

・業種によって、賃金モデルを変える必要があるのか知りたい

・役員と従業員の定着率は同じでよいのか知りたい

・いい人材を会社に集める方法が知りたい

といった要望があがりました。 窪田は「採用活動が完璧でない以上、企業には一定の離職率がないとおかしい」という意見を紹介しながら、大切なのは自社にとって必要なポートフォリオで循環することであると話し、講座をスタートさせました。

離職パターンを解明する

オリエンテーションではまず、自社の社員の職業スキルと企業文化への適応性を、高低に分けた表に記入していきました。

「評価と能力がフィットしていなければ、優秀な社員からやめていく」と窪田。会社は社員の能力を正しく評価できているのか、検証することから講義はスタートしました。

次に窪田は、離職のタイミングや要因をつかむためには、自社の離職パターンを解明しておくことが重要なポイントであると解説。

時代の変化は早く、モデルケースが実証されるまで待つと人事の世界はうまくいかないとし、独自の離職パターンを見抜いておくことを促しました。

傾向をつかんでおくべき要因として挙げられたのは、退職理由とタイミング。

例えば人材を扱う大手企業の調査によると、「キャリアアップがしたい、仕事の領域を広げたい」といったタテマエの離職理由に対し、多くの離職者のホンネは「上司の仕事の仕方が気に入らない、労働時間・職場環境・人間関係が不満」といったものでした。

自社の離職理由がどれに当てはまるかを考えると、打つ手は自ずと決まると窪田。「人間関係で悩んでいる社員には、報酬を上げても無駄銭にしかならない」と話しました。

あわせて新卒者を例に、入社後のモチベーションの上下をグラフにしたものを提示し、モチベーションが下がるタイミングで必要な施策を打つことの有効性も指摘。

入社3ヶ月目や6ヶ月目など、モチベーションの下がりやすい時期をゴールに定め、チーム目標達成のお祝いを行うなどの事例を紹介しました。

一方で窪田は、一度「やめます」と口にした社員は、95%が離職に至るという調査結果があることに言及。

離職理由とあわせてタイミング計り、「やめます」と言い出す前に離職要因を排除する、予防の重要性を説きました。

定着率を高める賃金制度

続いてテーマは、参加者の関心が最も高かった賃金制度に移りました。

スキルもカルチャーも自社にフィットした、入社5年目くらいの優秀な社員が大量に離職する企業をケーススタディとして選出。

損害が大きい一方で施策を打ちにくい「よくある」ケースに対して、どのような対策を講じるべきかを参加者に問いました。

窪田はホンネを引き出した調査において、入社4年目以降になると、離職理由に給与や昇進、キャリアに対する不満といった項目が増えてくることを指摘。

「正解はない」としながらも、5年目をめどに昇格を進める制度の策定や、目標となるポジションへのルートを明確にした事例を紹介しました。

賃金制度はうまく活用すれば、優秀な人材をつなぎとめる有効な手段になると窪田。

参加者の度肝を抜くような「攻めた賃金制度」をいくつも紹介し、経営を安定させながら優秀な人材を適正に評価し、自社に定着させる手法を披露しました。

一方でここでも、理想の賃金体系に正解はなく、会社ごとにポートフォリオを持つべきと窪田。

役割と役職に評価(手当)を連動させ、社員にはどう報いるのか、自社にとって、その時々の成果はどう測れば正しく評価できるのかを考えていくことが重要と話しました。

エンゲージメントと科学的適職

ここで窪田は改めて、第1回目で学んだERG理論に言及。

生存・関係・成長の3つ欲求のなかで、離職率を下げるために刺激すべき欲求はどれかを問いました。

例としてあげたのは、仕事がきつく給料がそれほど高くない会社でも、成長しているときは離職率が低いという事例。大量の離職は、成長にかげりが見えたときに始まると指摘しました。

ここで窪田が取り上げたのは、愛社精神や愛着心、思い入れといった解釈を示す「エンゲージメント」。

従業員と企業が一体となって相互に成長している会社は利益率や売上も伸びているとし、成長欲求を満たし、離職を予防するのに有効な要素であることを説明しました。

エンゲージメントを上げるための施策としては、

・会社と個人のビジョンをすり合わせ、方向線上の一致点を見つけること

・「エンゲージメント」を数値化し、PDCAに役立てること

・透明性のある人事評価とキャリア設計をすること

が重要であると窪田。

さらに仕事に対する幸福度は、以下7つの要素を満たしているかによって決まることが、科学的にも証明されていることを紹介。

①自由:仕事や働き方に裁量権がある

②達成感:進歩している感覚がある

③焦点:攻撃型、あるいは防御型のタイプが合っている

④明確:仕事内容と報酬が明確である

⑤多様:業務内容がバラエティに富んでいる

⑥仲間:自分と似た人が多い

⑦貢献:人の役に立っている感覚がある

社員一人ひとりにこれらをあてはめ、適材適所で適正な評価を行うことによって、社内のリレーションシップサイクルはうまく回るようになると解説しました。

まとめ

自身も信用金庫の人事出身という経歴を持ちながら、「人事は不思議な領域」と話す窪田。

賃金、採用、評価、育成それぞれのプロに特定の箇所だけ改革を任せても、組織がよくなるか、経営者のやりたいことにつながるかは運任せだと言います。

それを知るがゆえに全5回の講座を通じて訴えたのは、経営者一人ひとりが自社の経営ビジョンを明確にし、どんな組織が必要なのか、そこにはどんな人材が何人必要なのかをまず自身で定義すべきということ。

採用や育成、評価はそのビジョンに合わせて自ずと決まってくると伝えてきました。

講座の中では何度も、「経営者が作りたい会社を作ればいい」とくり返した窪田。

背景には、キャリアコンサルタントとしての支援を通じて、「中小企業の経営者には、自分が儲けたいのではなく、従業員にいい思いをさせたいと思っている人が多いことを知った」経験が息づいていました。

経営者・幹部・後継者を対象に、「超実践的学び場」として全5回の講座を無事終了したRally。

8月からは待望の第2部も開催予定です。

ぜひご期待ください!

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Writer この記事を書いた人

ライター  黒田 靜

岡山県在住ライター。企業メディアや会社案内、採用関連、SNSのコンテンツ制作などを数多く手がけている。対面やオンラインでの取材をもとにした、人やモノの背景に深く切り込むストーリー制作が得意。

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