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第3回 Rally「大企業に負けない採用戦略」講義レポート

  • 2020.05.19
  • 活動レポート

2020年4月20日(月)、中小企業診断士、窪田 司(くぼた つかさ)コォ・マネジメント株式会社代表取締役による、戦略的人事講座”Rally”、第3回目の講座が開講されました。

第1回「高収益組織をつくるための組織体系」では組織における量の定義を、第2回「中小企業における評価制度のポイント」では質の定義を学んできた参加者。

第3回では、リレーションシップサイクルを促進する要素のひとつ、「採用」について学び、自社の戦略を考えました。

講座のねらいと参加者の課題

今回の講座のねらいは、中小企業における採用戦略を考え、環境変化に左右されない採用戦略を理解すること。

実践的な目標としては、自社の採用戦略を、講義終了までにプレゼンテーションできる状態になることが掲げられました。

参加者からは

・面接の際、求職者の適性を見きわめる方法が知りたい

・汎用性のある採用ツールが欲しい

・人材不足の状況下における、面接での見きわめポイントが知りたい

といった要望があがりました。

窪田は「そもそも採用を目的とした面接のなかで、求職者の本質を見抜くことは不可能」としながらも、そこを含めながら採用を成功させるための採用戦略について、講座をスタートしました。

採用の目的を明確にする

自社の採用戦略を練るにあたり、窪田はなぜ中小企業にとって採用が難しいのかについて解説しました。

障害となっているのは、採用に対する見通しの甘さ。

生産年齢人口が減り、働き方改革によって人手が不足しているにもかかわらず、「そこそこ名の知れた求人サイトや情報誌に情報を掲載しておけば、そのうち誰か採用できるだろう」と考えている経営者があまりにも多いと窪田は指摘します。

求職者がなぜ自社に応募するのか。応募者の傾向と応募理由を把握していなければ、安定した採用は望めません。

・どうやって求職者と出会うのか

・どんな人材を求めるのか

・求める人材に対して自社はどんなメリットが提供できるのか

これらを明確にし、うまく組み合わせてはじめて、企業は採用力を上げていくことができると窪田は説明しました。

採用力=企業力×労働条件×採用活動

人材のパフォーマンスに与える影響として採用(50%)、配置(25%)、教育・評価・報酬(25%)という説をベースに考えても、「まずいい人材を採る」ことが最優先であることがわかります。

そのための採用力は、企業力・労働条件・採用活動のかけ算によって決まると窪田。

企業力を育てるには時間がかかり、労働条件を上げるには費用がかかります。短期間でコストを抑えて採用力を上げるには、採用活動に注力することが最短距離であると指摘しました。

さらに配置や教育と違って、採用での間違いは育成では修正できないことも窪田が採用活動を重視するポイント。

新卒の潜在能力を見越して将来的な組織補強のための採用を行うのか、中途採用によって空席の補充を行うのか、求める人材はかけられるコストと採用の目的に合わせて具体化していきます。

どの年齢が自社の採用ビジョンや給与に合うかを考えておくと、採用における失敗は減らせると窪田は話しました。

中小企業の採用戦略とは

参加者の議論が絶えない休憩を挟んだのち、テーマは”大企業との競争優位性の判断”へ。

中小企業の採用は、一騎討(一対一での出会い)や局地戦(定性採用)を狙うランチェスター戦略が有利であると窪田。大手採用サイトへの掲載など大企業向きの広域戦を潔く捨て、特定のセグメントに絞って採用を進めていくことが成功につながると断言しました。

具体的には、誰を狙って、他の会社と何がちがうのかをはっきりさせていく作業が必要となります。

同業他社と比べて、給与額や休日数が可視化されやすい定量採用が不利ならば、理念や仕事内容など、比較できない定性採用へ持ち込むことを助言した窪田。企業力が弱い会社でも、やり方を工夫することで有利な採用も可能になると話しました。

また窪田は、仕事内容や企業理念を重視する傾向がある新卒採用に対して、中途採用は金銭報酬や労働条件を重視する傾向が強いことを指摘。

それでも中途採用を狙っていくのであれば、求職者との出会い方を工夫すべきと説明しました。

目指すビジョンに合うのは中途なのか新卒なのか、求職者を惹きつけられる自社のポイントは何なのか、どうやって目的の人材と出会うのか。

講義はここから、より具体的な絞り込みに入っていきました。

大企業に負けない採用を実現するには

ここまでの講義で窪田は、中小企業が採用を成功させるには、一対一での出会いと、採用する人材の絞り込み、ビジョンを武器とした定性採用の組み合わせで、中小企業でも能力のある人材を採用できることを伝えてきました。

多くの中小零細企業の取り組みに対しては、

・会社選びをしている時点で、求職者はすでに一対一での出会いに向かないターゲットであることを理解していない

・面接ではすべての人材にコミュニケーション能力を求めてしまい、技術力に特化した人材を見落とす可能性を高めている

・わずかに休日数を増やしても、他社との差はほとんどアピールできていない

といった点を指摘。

本気で自社に合う人を見つけたいのであれば、

・転職意思のない層へのスカウトや、社員や知人からの紹介を強化する

・部活採用や趣味採用など、職種にフィットしやすい性質を持つ層との出会いを作る

・ビジョンを武器としたファン採用を視野に入れる

など、大手とは異なるフィールドで戦うことによって、採用には十分成功の余地があると断言しました。

「中小企業であっても、新卒採用で成果が出ないなんて考えられない」と窪田。まとめに向かい、経営者の採用に対する姿勢が問われていきます。

まとめ

今回の講義の中で窪田は、「巨額の投資である人材に対して、経営者はあまりにも無頓着すぎる」ことを何度も指摘しました。

商品を売ることに対しては必死なのに、コストに莫大な影響を及ぼす採用の優先順位は低いと言葉を重ねます。

一方で採用に成功している中小零細企業の経営者は、普段から採用のアンテナが高いと窪田。同業者との会食や、他社と関わる機会があれば常に、「採用できそうな人材がいないか」を念頭に置いて情報交換していると話します。

採用・育成・定着への観念が低く、求職者の心理を理解しようとしない経営者は、社員に対する理解も低いと窪田。

求職者を前にしてはじめて採用に目を向けるのではなく、経営者自身が採用担当者としての意識を持ち、より多くの人に理念やビジョンを語るべきであると話し、講座は締めくくられました。

工夫すれば、採用は難しくないと発想を切り替えること。それでもあえて難しいと感じるのであれば、「難しいけど何かする」ことを決断せよとつきつけた窪田。

3回の講座で実践を重ねてきた参加者は、今回もまた新たな行動指針を得て、自社の未来図をより具体的に描いていました。

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Writer この記事を書いた人

ライター  黒田 靜

岡山県在住ライター。企業メディアや会社案内、採用関連、SNSのコンテンツ制作などを数多く手がけている。対面やオンラインでの取材をもとにした、人やモノの背景に深く切り込むストーリー制作が得意。

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