コォ・マネジメントのセミナーは「ひとつとして同じ内容では実施しない」がモットー。
第2部となる今回も、1部とは違う事例やトピックを盛り込みながら実施されています。
「評価制度で組織のルールをつくる」をテーマにした第3回の講座でも、参加者からの質問に答える形で”中小企業あるある”に窪田のメスが入りました。
現場がうなずく、目標管理制度の残念な運用状況
今回注目が集まったのは、「人事の最先端をゆく大企業では、これまでもてはやされてきた目標管理制度はすでに古いと考えられていると聞くが本当か」という参加者からの質問。
ご自身の会社でも目標管理制度がうまく機能していないため、非常に共感を覚えていると訴えました。
自社ではトップが決めた方針を各部門から従業員ごとの目標に落とし込み、月次の結果を出して期末に報告を行う一般的な方法を採用しているとのこと。
質問者は「上司も部下も自分で決めたわけでもない目標を定められ、やる気も出ず、成長にもつながっていないと感じている」といいます。
「前向きにもなれない制度で評価されるくらいなら、いっそサイコロでもふって評価を決めた方が、透明性があって社員も納得できるのではないか」とさえ。
多くの企業で見られるこの状況、窪田もまた「目標管理制度はもう使えない」と判断しているのでしょうか。
プロセスは正しく、目標管理制度に問題はない
この質問に対して窪田はまず、「上位方針を部門方針とし、それを部下に落とし込んでいく御社のプロセスは正しい」と回答。
日本では目標管理がノルマ管理と同じ意味で捉えられることが多いものの、この制度はもともと社員のモチベーションアップを目的とするもの。
上司から示された目標に対してどんな行動を取るべきか、部下が自発的に考え取り組むことができるシステムであると説明しました。
ただ一方で、「社員が自発的に取り組めていないのは、制度が古いからではなく目標設定を間違えているから」と窪田。
目標設定がどのようになされているかを、改めて確認する必要があると伝えました。
さらに窪田は、「そもそも組織とは上司の命令に基づいて動くもので、社員は会社方針に従うことが前提である」と解説。
それぞれが業務に取りかかる前に「会社の目標を達成するためには、この部門ではこれが必要だ」という部門方針をメンバー全員が合意している、あるいは話し合いの末、議論がまとめられていることが必要であると加えました。
目標管理制度がうまく機能するかどうかのポイントは、全員が合意できる部門方針を設定すること。
個人目標は、部門目標が適切に設定された上で決められていくべきものであると窪田は伝えました。
目標管理制度が必要なのは、管理職まで
次に窪田は、多くの企業で全社員を対象として運用されている現状に対し、「ほとんどの一般職や非管理職層にとって、目標管理制度は必要ない」と明言しました。
ここでは「無事故無違反」が最も重要な任務である”とある企業の社長専属の運転手”や、「ミスをしないこと」が求められる金融機関の窓口業務、一般事務などをピックアップ。
これらの業務は「前期より成長すべし、定量的に測れる目標にすべし」などと言われる目標管理制度は適用されづらいと理由を説明しました。
「できて当たり前の業務を完璧にやりきることが目標になる職種にとって、この制度は不要」というのが窪田の考え。
目標管理制度は裁量権を持ち、クリエイティブな目標を立てて業務に取り組む部長や課長クラスの人にとって有効な制度であると説明しました。
うまく運用できていないのであれば、適用する必要のない社員にまで対象を広げていないかをまず確認するよう質問者に伝えました。
結論として窪田は、目標管理制度は正しく運用されれば今でも十分に有効、かつ優秀な制度と回答。
すべての会社に合う制度ではないものの、自社でうまく運用されていない場合は、失敗の原因が正しく把握できているかを検証することが軌道修正のポイントとなると締めくくりました。
今回講座でお話しした採用についての総合的な内容は、第一部2回 Rally「中小企業における評価制度のポイント」講座レポートで詳しくお伝えしています。
ぜひそちらもご覧ください!
(text by:黒田 靜)