経理部長が一次面接で選んだ落ち着きのある人材に対し、二次面接官の営業部長から「熱意が足りない」とのクレームが。
採用の現場ではよくある対立ですが、社内において欲しい人材像が統一されていないのは非常によくない状態です。
必要のない、あるいは自社に合わない人材を採用し、会社の方向性自体がブレてしまう結果になりかねません。
そこで今回は窪田に、採用におけるターゲティングは何をどう絞っていくべきなのか、それによって何を見極めるのかを採用ニッチ戦略の観点から聞いてみました。
ターゲティングの目的は求める人材のイメージを共有し、的確なアクションを起こすこと
窪田は2022年2月に出版した著書、「小さな会社こそが絶対にほしい!化ける人材採用の成功戦略」のなかで、人材のターゲティングは
①採用ポジションの確定
②ハイパフォーマーの要素分析
③ペルソナ化
④自社の訴求ポイントの絞り込み
によって行うと述べています。
これによって明確になるのは、「採用活動において、いつどこで誰に対してどのようなアクションを起こすべきなのか」ということ。
採用に関わる人が共通認識を持ち、的確なアクションを起こせば、小さくても無名でも欲しい人材は採用できると窪田はいいます。
そこで上記4つの項目を明確にしていくには何をしていくべきなのかを、書籍の内容かさらに深掘りしてみました。
まず①の「採用ポジションの確定」について窪田は、多くの会社で耳にする「ベテランが来てくれたら助かるけど、新卒や未経験者でも育成していく」という募集の仕方を、完全にNGであると言い切ります。
ひとつには求人広告を出すにあたり、家族を抱えて子どもの学費を負担している40代半ばと、実家に住んで給与はほとんど自分の自由になる20代前半とでは、響く言葉が異なることが理由に。
求人広告を出すにあたり、刺さる言葉が全く違うことに気づく必要があるとのこと。
一方で「本当に必要な人材は決まっているはず」とし、漠然と感じる人手不足が、「定年間近の部長のポジションを引き継ぐ人材がほしい」なのか、「若手が多いから、まとめるリーダーがほしい」なのかを考えて決めるべきといいます。
そして②の「ハイパフォーマーの要素分析」では、①で確定した採用ポジションで現在活躍する人が、どういう考え方や行動をしているのかを調査分析します。
費用がかけられないのであればインタビューやアンケートが分析手段となるものの、「数百円のものでよいので、妥当性や信頼性が担保された適性検査を実施すると客観的なデータが得られる」と窪田。
ストレスに強いことがよいと思っていたけれど、実際に自社で結果を出しているのは敏感に相手や環境の変化を察知できる、ストレスを感知しやすい人だったという例も。
担当者の経験や感覚など主観的なデータではなく、自社のハイパフォーマーがどのような能力や性質によって結果を出しているのかを定量化すると、採用過程でどのような項目で、どういった傾向を見極めるべきかがはっきりすると述べました。
ペルソナ化によって、「どこで、どんな人に」が浮き彫りに
アニメキャラクターのように、完全に独立した人物を作り込む企業も登場している③の「ペルソナ化」。
著書では絞り込む項目が
・出身校
・部活、サークル
・アルバイト、前職
・趣味
・好きなメディア
・志望業界
・志望企業
・職場選びで重視すること
といくつも挙げられています。
窪田は「これらを絞り込むことによって、採用者の行動を決めていくことができる」といいます。
例えば岡山大学の学生が採用したいのであれば、大学のキャリアセンターを訪問し、学校とのつながりを構築していくことが岡大生採用の最短距離。
採用向けのポスターを掲示するなら最寄りの駅がいいでしょうし、岡大の周りにある飲食店に行けば、その他の地域より岡大の学生がアルバイトをしている確率が高いので、食事ついでにアルバイト学生に話しかけ、狙い通りの人材であれば自社をPRすればよいと窪田はいいます。
生々しい手段ですが、数人ならこれで十分狙った学生を採用することが可能とも。
部活やサークルも同様で、実際に「京都大学ラグビー部の学生を採用したい」と定めているとある企業は、京大ラグビー部にスポーツドリンクやプロテインなどを頻繁に差し入れしている事例もあるとのこと。
いざ採用活動となったときも、「いつもスポドリを持って来てくれる会社」という抜群の知名度を発揮し、採用を成功させているといいます。
野球部なら「満塁ホームラン」、サッカー部なら「ハットトリック」、ラグビーなら「スクラム」という言葉が求人広告やパンフレットにあることで、その分野に所属する人の目に留まる確率が大幅にアップするとも。
採用活動は大がかりでかしこまったプロジェクトではなく、ペルソナさえ明確にできていれば、日ごろの行動や発信する情報に自然に組み込んでいけるものと窪田は話します。
自社が金融機関ではなくても金融機関を志望する学生が採用したいのであれば、金融機関が出展する合同説明会に参加し、金融機関のブースから出てきた学生に話しかけることもひとつの手段。
自社に金融機関と深い関連性があり、金融機関以上に活躍の場があることを伝えられれば、異業種でも十分に採用の可能性があると話します。
「ペルソナ化には、マーケティングの手段が完全に応用できる」と窪田。
商品を売るときのように、「どんな相手にどこで何を使ってPRするのか」を明確にすることで、応募者数は獲得できるといいます。
現実と向き合い、リアルな訴求ポイントを打ち出す
地元就職を希望する地方国立大学の学生に対して、「なぜ地元就職がいいのか」を調査したところ、約55%の学生が「近いから」と回答したという結果があります。
さらに約49%は、「知っている人が近くにいるから」と回答。
採用活動では多くの会社が理念を打ち出し、想いに共感する人を求めるのに対し、求職者側は非常に現実的であることがわかります。
窪田も④自社の訴求ポイントの絞り込みについては、高い理念を持つことは悪いことではないが、全国に向けて「想いに共感する人集まれ!」と大々的な広告を打つより、半径5km圏内程度を対象にチラシを配布した方が求めた結果を出せることも往々にしてあるといいます。
自社の社員に応募理由をヒアリングしてみて、大多数が「家から近かったから」と答えるのであればそれが現実。
優秀な社員が入社しているのであれば、それはそれでひとつの正解なので、「家から近い」を重視する人をターゲットとする採用活動を行い、将来に向けて理念を共有できる人を集める方向へ少しずつシフトしていけばよい、と窪田は話しています。
最初にお話ししたとおり、ターゲティングはあくまでも応募数を上げるために、採用者側が共通認識を持ち、的確な判断ができるようにするためのもの。
「松岡修造のような熱血な人がほしい」と定めていれば、居酒屋で声を張り上げ接客している学生に声をかけるべきかどうかが判断できる、そのための基準であると窪田は定義しました。
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