2020年12月15日(火)、中小企業診断士、窪田 司(くぼた つかさ)コォ・マネジメント株式会社代表取締役による、戦略的人事講座”Rally”第2部、5回目の講座が開講されました。
「定着率を上げる科学的な賃金設計法」がテーマとなった今回、参加者は組織が健全な循環を行うための賃金設計について学び、意見を交換。
この日も前回までと同様、参加者からは日ごろ感じていた経営における疑問がいくつも上がり、メインテーマ以上に盛り上がる場面も見られました。
今回はその中でも様々な解釈が見られた、「エンゲージメント」についてふり返ります。
エンゲージメントとは?
今回の講座では、プログラムのなかに「エンゲージメントと科学的適職」という項目が設けられ、社員のエンゲージメントが上がることによって得られる効果が解説される予定となっていました。
ところが開始早々、窪田が募った「本日知りたいこと」に対し、中小企業診断士である参加者から「エンゲージメントに対する経営者の解釈があいまいで説明が難しい」との悩みが。
他の参加者からも「そもそもエンゲージメントという言葉の意味をわかって使っている経営者はどれほどいるのか」、「コミュニケーションの場でその言葉は本当に一般化しているのか」との疑問が寄せられました。
これに対し窪田は、エンゲージメントの一般的な解釈として「社員一人ひとりが企業の掲げる戦略・目標を適切に判断し、自発的に自分の力を発揮する貢献意欲」という一文を紹介。
「わかるようでわからない」文言を改めて「従業員の会社に対する愛情や思い入れ、つまりは愛社精神や貢献意欲を指す言葉」と説明し直し、参加者にそれぞれの解釈を問いました。
参加者が捉えていた「エンゲージメント」
質問を寄せた参加者は窪田からの問いに対し、エンゲージメントを「その仕事を自分ごとで考えながら、楽しさを感じて自ら動く姿勢」と回答。
「組織に働きがい、やりがいを感じられる風土があることもエンゲージメントを構成する要素である」と加えました。
一方で別の参加者からは、「経営や組織について話す際に、そもそもエンゲージメントという言葉を使わない」との回答も。
理由は「愛社精神に代表される意識を”エンゲージメント”という言葉に置き換えることで、自分の言葉ではないような感覚に陥り、会話にリアリティが持てなくなる」というもの。
「自己成長ややりがい、帰属意識といった自分の感覚により近い言葉に分解して使っている」と現場での扱いを紹介しました。
これに対し窪田は、実用の場では貢献感や適合感、仲間意識といった構成要素で定義することも有効であると同意。
「言葉の定義以上に、『愛社精神など”エンゲージメント”に含まれる意識が高いと、従業員は離職しにくくなる』と知っておくことが大切」と話しました。
従業員の定着率とエンゲージメント
「エンゲージメントと科学的適職」の項目では改めて、今回のテーマである従業員の定着率とエンゲージメントの関係に言及した窪田。
「エンゲージメント=愛社精神」とし、新卒で採用した社員のエンゲージメントは入社7年目までは下がり続け、その後上がるという“Jカーブ効果”を提示しました。
この考え方によると、23歳で採用された社員の愛社精神が上昇し始めるのは30歳前後。
30歳を超える時期にようやく会社と一体になる感覚を持ち始めるものの、それまでは離職する可能性が十分にあることを示しています。
これに対し、エンゲージメントを持てるようになるまではモチベーションが変化する時期に適切な施策を講じることが重要になってくると窪田。
モチベーション曲線などで離職しやすいタイミングを見計らい、賞与や1on1、社内やチームのコミュニケーションを深めていく必要性を伝えました。
窪田はまた、グロウス・パッションについても言及。
「仕事に対する情熱は、時間や手間などのリソースを注ぐから生まれるものである」と話し、仕事への情熱、自身の成長、適性によってエンゲージメントは育まれていくと話しました。
まとめとして、適職には以下7つの要素があることを解説。
①裁量権はあるか(自由)
②進歩している感覚はあるか(達成感)
③攻撃型or防御型タイプは合っているか?(焦点)
④内容と報酬は明確か(明確)
⑤業務内容はバラエティに富んでいるか
⑥自分と似た人が多いか(仲間)
⑦他人の生活に影響を与えるか(貢献)
「経営者が取り組むべきことは、どんな組織を作ってどんな機能を果たす部署を設置し、そこにどんな人材を配置してどう育てていくかを順に考え組織を作っていくこと」と窪田。
エンゲージメントはその中で育まれ、企業の成長のためになくてはならないものだと補足しました。
今回講座でお話しした採用についての総合的な内容は、第一部第5回 Rally「定着率を上げる科学的な設計法」講義レポートでも詳しくお伝えしています。
ぜひそちらもご覧ください!
(text by:黒田 靜)